チェックポイント(導入時・導入後)
労働組合はどのようなポイントに着目してDC制度に関わっていけばいいのでしょうか。導入時および導入後のチェックポイントをまとめてみます。
- 導入時・導入後のチェックポイント
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会社側の取組みを監督することが主な役割
制度の導入において、会社側はできるだけ負担が少なくなる方法を考えがちです。労働組合は、加入者に不利益が生じていないかをしっかりチェックしなければなりません。
もっぱら加入者の利益のために
運営管理機関や運用商品の選定等においては、「メインバンクであるから」といった理由だけで選ばずに、定期預金であれば金利の水準をみるなど加入者の利益を第一に選ばなければなりません。
会社側に投資教育実施の働きかけを
DC制度では、加入者が自己責任で資産運用を行わなければならないので、導入後も、会社が加入者向けの投資教育を継続的に行う責務があります。労働組合からも適切な実施を働きかけると良いでしょう。
- 確定拠出年金法第43条には事業主の行為準則が明記されており、その法令解釈において、運営管理機関や運用商品を選定等する際や、投資教育を委託する場合は、加入者の利益のみを考慮し、適切に行わなければならないとしています。
- 導入時のチェックポイント
加入者のことを考えた制度設計が重要
例えば、DC制度導入時に確認しておきたいポイントは以下のようなものがあげられます。
- DC規約の内容が適切なものであるか
- (可能なら)運営管理機関選定コンペに参加する
- (特に)想定利回りの設定は加入者にとって無理がないか
- 運用商品の選択肢が適切なものであるか
- 特定の金融機関に偏ってはいないか
- 中立、客観的な見地から適切な商品群といえるか
- 導入時投資教育が適切なものであるか
- 導入時説明(投資教育)の内容チェック
- 継続的な投資教育実施の確約
- 制度変更(資産の移換)を伴う場合はその条件はどうか
- 従前の退職給付水準との差
- 各世代の新旧制度の水準比較(不公平となる世代はないか)
- 経過措置の有無(50代の既得権の保証等)
- 既発生の積立不足の対応
いずれも、労働者を代表する立場として、内容を確認し、しっかり交渉すべき項目です。規約に記載する内容についてはここまでのページで解説してきた内容を踏まえつつ、労使交渉に臨む必要があります。
また、法令では少なくとも5年ごとに運営管理機関を評価すること等が求められています。なお、運営管理機関の評価は法令解釈通知(2018年7月現在)では、以下の項目等が示されています。
具体的な評価項目
評 価 項 目 1 提示された商品群の全て又は多くが1金融グループに属する商品提供機関又は運用会社のものであった場合、それがもっぱら加入者等の利益のみを考慮したものであるといえるか。 2 下記(ア)~(ウ)のとおり、他の同種の商品よりも劣っている場合に、それがもっぱら加入者等の利益のみを考慮したものであるといえるか。 - (ア)同種(例えば同一投資対象・同一投資手法)の他の商品と比較し、明らかに運用成績が劣る投資信託である。
- (イ)他の金融機関が提供する元本確保型商品と比べ提示された利回りや安全性が明らかに低い元本確保型商品である。
- (ウ)同種(例えば同一投資対象・同一投資手法)の他の商品と比較して、手数料や解約時の条件が良くない商品である。
3 商品ラインナップの商品の手数料について、詳細が開示されていない場合又は開示されているが加入者にとって一覧性が無い若しくは詳細な内容の閲覧が分かりにくくなっている場合に、なぜそのような内容になっているか。 4 確定拠出年金運営管理機関が事業主からの商品追加や除外の依頼を拒否する場合、それがもっぱら加入者等の利益のみを考慮したものであるか。 5 確定拠出年金運営管理機関による運用の方法のモニタリングの内容(商品や運用会社の評価基準を含む。)、またその報告があったか。 6 加入者等への情報提供がわかりやすく行われているか(例えば、コールセンターや加入者ウェブの運営状況)。 また、確定拠出年金制度を長期的・安定的に運営するには、運営管理業務を委託する運営管理機関自体の組織体制や事業継続性も重要となることから、運営管理業務の運営体制、運営管理機関の信用及び財産の状況なども評価項目とすることが考えられます。
さらに、運営管理機関の定期的な評価は、事業主が主体的・俯瞰的に再点検し、運営管理機関との対話を通じて、制度の是正又は改善につなげていくべきものであり、点検すべき項目や手法については、その企業の規模や加入者等の構成、制度導入からの定着度、投資教育の充実度等により、それぞれの事業主において異なると考えられることから、上記項目以外であっても、運営管理機関から運営管理業務に付随して提供を受けているサービス(例えば、投資教育を委託している場合の投資教育の内容や実施方法、頻度等)で点検する項目があれば、その項目についても評価することが望まれます。※出典 厚生労働省「事業主による運営管理機関の評価について(2018年7月24日施行分)」
- DC規約の内容が適切なものであるか
- 導入後のチェックポイント
よりよい制度運営ができるよう、継続的なチェックが必要
制度導入後については「投資教育の取組み」「適切な制度運営の検証」等について、会社が5年ごとに運営管理機関の評価を行うなどの責務がありますので、労働組合と会社がきちんと運営管理機関を監督していくことが必要です。
「投資教育の取組み」については、まず投資教育の実施を会社に求め、あわせて加入者の生の声を集約して会社に届けたり、投資教育の内容を検証していく役割が期待されます。
「適切な制度運営の検証」については、投資教育以外の点で、加入者に不利益が生じていないか、あるいはさらに改善の余地がないか等、加入者の要望をとりまとめて会社と協議していく必要があります。
いずれも、会社側はできるだけ負担が少なくてすむ方法を考えがちですから、加入者の利益を守る立場から労働組合がしっかり声をあげていかなくてはなりません。
- DC制度の導入時と、規約変更時以外に、会社は労働組合の同意を得る義務はありません。
しかし、法令解釈通知等では、制度導入後も労使で定期的に制度運営を検証・協議することが望ましいとされています。
- 投資教育の取組み
- 投資教育の実施要請
- 投資教育の継続的実施計画の確認
- 投資教育のプログラムの内容チェック
- 組合員の投資教育への希望ヒアリング
- 適切な制度運営の検証
- 制度全般への組合員の希望ヒアリング
- コールセンターのサービスチェック
- 運営管理機関のサービスチェック
- 運用商品の定期的チェック
- 加入者の運用状況の検証
- DC制度の導入時と、規約変更時以外に、会社は労働組合の同意を得る義務はありません。
- チェックポイント<まとめ>
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- 制度導入前
- 従前の退職給付水準との差
- 各世代の新旧制度の水準比較
- 経過措置の有無(50代の既得権の保証等)
- 想定利回りの設定
- 既発生の積立不足の対応
- 継続的な投資教育実施の確約
- 運営管理機関選定コンペへの参加
- 運用商品選定内容のチェック
- 導入時説明(投資教育)の内容チェック
- 労働者に大きな影響を与えることを踏まえ
労働者の代表として
新制度の内容を確認する重要な役割
- 制度導入後
- 投資教育の実施要請
- 投資教育の継続的実施計画の確認
- 投資教育のプログラム内容チェック
- 組合員の投資教育への希望ヒアリング
- 制度全般への組合員の希望ヒアリング
- コールセンターのサービスチェック
- 運営管理機関のサービスチェック
- 運用商品ラインアップの定期的チェック
- 加入者の運用状況の検証
- 適切な制度運営のため
加入者の声を会社に届ける役割
会社の取組みを監督する役割