はじめに(概要)
確定拠出年金(企業型DC)は会社が掛金を拠出し、加入者(従業員)が自己責任で運用するなど、従来の「確定給付型」の企業年金とは大きく特徴が異なります。
2012年3月に制度廃止となった「適格退職年金」や、退職給付会計の改正を踏まえた「確定給付企業年金」、「退職一時金」からの制度移行が多く、2012年1月から利用可能となったマッチング拠出を契機に、更に利用が拡大している制度です。また、新たな動向として、給与(または一時金)の一部を「ライフプラン選択金」等と再定義(退職金扱い)し、従来通り給与として受取る(退職金の前払いとして給与で受取る)か、企業型DCへ拠出するかを選択する「選択制DC」の制度導入が増えています。
確定拠出年金(企業型DC)の特徴
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1会社が拠出した掛金を、加入者(従業員)の判断で運用し、その運用結果次第で受取額が変動します。加入者は運用リスクを負う反面、会社が拠出した掛金がその時点で加入者の資産となるので、給付減額リスクを負いません。 -
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2会社は退職給付債務もなくなり、積立不足への懸念が解消されます。その反面、加入者が運用スキル等を身につけられるよう、継続的な投資教育を実施する責務があります。 -
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3確定拠出年金の運用商品は、主に元本確保型商品である「定期預金」・「保険商品」と、元本確保型以外の商品である「投資信託」の組合せで構成されます。適切な運用商品がバランスよく選定されているか、労働組合としてもチェックが必要です。
※1 企業型DCにおける事業主掛金および加入者掛金は、規約に拠出方法を定めることにより、複数月分をまとめて拠出することも可能です。ただし、iDeCoに加入する場合は、事業主掛金とiDeCoの掛金が各月の拠出限度額の範囲内での各月拠出となっている必要があります。
※2 2022年4月2日以降に70歳の誕生日を迎える方(1952年4月2日以降生まれ)が対象です。
- 確定拠出年金(企業型DC)を導入するには?
確定拠出年金を導入するにあたっては、現行制度の問題の把握から始まり、確定拠出年金の導入による効果検証、想定利回りなどの制度の詳細設計、運営管理機関の選定、運用商品ラインアップの検討、規約の承認申請、従業員への説明実施、投資教育など、労使で整理・検討するべき事項や諸手続きが多岐にわたります。
検討着手から運用開始までは少なくとも1年程度の期間は想定しておく必要があります。- 労働組合の方へ導入のポイント
- 確定拠出年金を実施する会社は、加入者等のために忠実にその業務を遂行する義務を負っており、もっぱら加入者等の利益のみを考慮して業務をすることが法令で定められています。
とりわけ現行制度から確定拠出年金への移行に際しては、受給権がどのように変更されるのか、組合員に不利益が生じていないかなど、労働組合が積極的に検証する必要があります。