運用について(運用商品の選び方)
自己責任での運用が求められる確定拠出年金は、加入者が適切な運用スキルを身につけること、適切な運用商品が運用商品ラインアップに入っていることが重要です。
- 確定拠出年金は自己責任で運用する
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DCの資産運用には、適切な投資教育と運用商品が必要です
確定拠出年金の大きな特徴は、加入者自らが運用を行うということがあります。どのような金融商品をどのくらい購入するかを決めなければなりません。また、運用に際しては、自ら運用の指図を出す必要もあります。
運用の結果は一人ひとりが受け入れなければなりません。運用がうまくいけば、より多くの退職金が得られるかもしれませんし、逆に予定より少なくなってしまうこともあるかもしれません。ただし、こうした運用を行うためには、「適切な投資教育が行われ運用スキルを身につけられること」と、「適切な運用商品の選択肢が提示されていること」が前提条件です。
- 企業型DCは加入者の運用リスクばかりが注目されますが、その責任は自身の資産についてのみ負えばよく、DBのように年金資産全体の積立不足の穴埋めの影響を受けることはありません。
- 運用商品の選定ルール
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運用商品ラインアップは、リスク・リターン特性の異なる3本以上35本以下で用意します
企業型DCを導入するにあたっては、規約ごとに運用商品ラインアップを決めなければなりませんが、いくつかのルールが定められています。
まず、運用商品は「3本以上35本以下」の範囲で用意する必要があります。その他、「個別株式や個別社債、自社株ファンド等のような特殊な商品は“3本以上”のカウントに含まれない」等のルールが定められています。
このルールを踏まえたうえで、安全性が高く、安定した収益が得られる定期預金や保険商品、元本割れのリスクはあるものの定期預金などよりも高い利回りが期待できる投資信託を組合せて運用商品ラインアップを構成していきます。
運用商品は20本程度を選定するのが一般的で、元本確保型商品は3~4本の商品を採用、投資信託はそれぞれの投資対象ごとに1~2本採用する傾向があります。また、投資信託については複数の投資対象を最初から組合せて購入する「バランス型」と呼ばれる投資信託を3本ほど採用する傾向もみられます。- 運用商品ラインアップの商品選定はDC制度導入時だけでなく、導入後の商品追加も可能です。
商品ラインアップの定期的な検証を行ったり、新たな運用商品を検討追加することで、制度の改善が期待できます。
- 運用商品ラインアップの商品選定はDC制度導入時だけでなく、導入後の商品追加も可能です。
- 運用商品の選び方のポイント
運用商品の選定には、労働組合の積極的な関与が望まれます
運用商品を選定・提示するのは運営管理機関ですが、運用商品ラインアップの決定は、労使協議により、以下のポイントで検討することになります。
運用商品の選定ポイント 1 提示された商品群の全て又は多くが1金融グループに属する商品提供機関又は運用会社のものであった場合、それがもっぱら加入者等の利益のみを考慮したものであるか。 2 下記(ア)~(ウ)のとおり、他の同種の商品よりも劣っている場合に、それがもっぱら加入者等の利益のみを考慮したものであるか。 - (ア)同種(例えば同一投資対象・同一投資手法)の他の商品と比較し、明らかに運用成績が劣る投資信託である。
- (イ)他の金融機関が提供する元本確保型商品と比べ提示された利回りや安全性が明らかに低い元本確保型商品である。
- (ウ)同種(例えば同一投資対象・同一投資手法)の他の商品と比較して、手数料や解約時の条件が良くない商品である。
3 商品ラインナップの商品の手数料について、詳細が開示されていない場合又は開示されているが加入者にとって一覧性が無い若しくは詳細な内容の閲覧が分かりにくくなっている場合に、なぜそのような内容になっているか。 4 確定拠出年金運営管理機関による運用の方法のモニタリングの内容(商品や運用会社の評価基準を含む。)、またその報告があるか。 5 加入者等への情報提供がわかりやすく行われているか(例えば、コールセンターや加入者ウェブの運営状況)。 ※出典 厚生労働省「事業主による運営管理機関の評価について(2018年7月24日施行分)」をもとに労働金庫連合会で作成
- 運用商品のバランスは適当か? 偏りはないか?
(定期預金・保険・国内債券・国内株式・外国債券・外国株式・バランス型・その他) - 商品提供機関のバランスは適当か? 偏りはないか?
- 運用商品の数は適当か? 少なくないか?
- 指定運用方法の設定は適当か?
- 定期預金に期間の異なる商品が提供されているか?
- より利率の高い定期預金を追加できないか?
- より手数料の安い投資信託を追加できないか? など
- 投資教育の責任
会社は継続的な投資教育を実施する責務があります
企業型DCは、会社に投資教育の責務があります。この責務は制度導入時だけでなく導入後も負っていることが法令で明確にされています。
どんなに良い運用商品ラインアップであっても、それを上手に組み入れて運用できなければ、意味がありません。どうやって商品を組合せていけばいいのか、どのような考え方にもとづいて運用の指図を行えばいいのかなどの知識を従業員に提供するため投資教育は重要な取組みというわけです。
会社は制度導入時には投資教育を行うものの、制度を導入した以降はあまり積極的に投資教育を行わないケースもあります。従業員に運用の自己責任を求める前提は、会社の投資教育の取組みにあるといっても過言ではありません。労働組合は、会社が適切な投資教育を継続して行っているか見守る責任がありますし、必要に応じて改善を求めていくことが必要です。
- 運用について(運用商品の選び方)<まとめ>
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- 加入者が適切に運用できる環境を整える必要があります
- 企業型DCは、加入者が適切な運用スキルを身につけること、適切な運用商品ラインアップを整えることが求められます。
- 運用商品の選定、定期的な検証も労働組合の役割です
- 運用商品ラインアップにどのような商品が入っているかは、加入者の資産運用結果につながる重要なポイントです。導入時だけでなく、導入後の検証などにも、労働組合の積極的な関与が望まれます。
- 継続的に投資教育が実施されているかチェックを
- 運用商品は加入者に適切に利用されてこそ意味があります。そのためには、投資教育が継続的に実施される必要がありますので、実施されていないようなら労働組合から会社への積極的な働きかけが求められます。