財形公的融資制度 財形制度とは

39.財形住宅貯蓄の契約要件

財形住宅貯蓄の申込みは55歳未満の勤労者であることが条件で、1人1契約に限られ、積立期間を5年以上として契約します。

40.財形住宅貯蓄の積立期間の考え方

財形住宅貯蓄は、契約時に積立期間を5年以上と定めます。持家としての住宅の取得または持家である住宅の増改築等(以下、「住宅の取得等」といいます)のための費用を貯めるには一定期間が必要との考え方によるものです。

しかしながら、住宅の取得等の時期をあらかじめ決めることは無理があることから、住宅の取得等のためであれば、5年以内であっても払い出すことは可能とされています。つまり、積立期間5年以上は、契約要件であり履行要件ではありません。

41.非課税限度額を超過した場合における財形住宅貯蓄の積立ての継続

財形住宅貯蓄の残高が非課税限度額を超えると、その後に生じる利子は課税扱いとなりますが、財形住宅貯蓄の契約は存続しますので、課税で積み立てながら残高を増やしていくことは可能です。

住宅の取得等のためには自己資金を多く積み立てた方が有利であり、非課税限度額を超えて課税扱いで残高を増やしていくこともひとつの方法といえます。

上記のケースで550万円の非課税限度額を申告していた場合には、550万円を超過するまでに元加された利子は非課税であることから税制優遇を受けたといえます。
なお、財形住宅貯蓄の「財産形成非課税住宅貯蓄廃止申告書」を提出すれば、財形年金貯蓄に非課税申告ができることになります。

42.財形住宅貯蓄の適格払出しの考え方と住宅の取得等以外の払出し

財形住宅貯蓄を非課税で適格に払出すには、取得または増改築等を行う住宅および払出方法等が法令等で定められた要件を満たす必要があります。

なお、適格払出しとされる要件を満たさない場合には、要件外払出しの解約となり、解約利子が課税されるとともに、5年遡って、その間に非課税で支払われた利子が課税扱いとなって追徴されます。

43.取得する持家住宅の要件

住宅の取得には、新築住宅の建設・購入、中古住宅の購入がありますが、適格払出しの対象となる住宅には契約者本人の所有名義部分があることのほか、以下の要件があります。
事由
対象
床面積
費用等
新築・新築住宅購入
  • ① 建物の新築
  • ② 戸建住宅の購入
  • ③ マンションの購入

※1令和5年12月31日以前に建築確認を受けたものについては、40㎡以上50㎡未満も対象とする

50㎡以上※1 払出額以上
中古住宅購入
  • 次のいずれかの建築物
  • ① 昭和57年1月1日以降に建築されたもの
  • ② 耐震基準適合※2
このほか、店舗併用や賃貸併用住宅では、床面積の過半以上が自己の居住の用に供されていることが条件となります(自己の居住の用に供されている面積が50㎡以上必要)。

※2耐震基準は、建築士等が発行する「耐震基準適合証明書」によって証明されます。

44.取得する持家住宅の費用の範囲

財形住宅貯蓄の適格払出しの対象となる費用の範囲等は以下のとおりです。

住宅取得のための対価で取得時に支払われる費用(頭金支払を含む)
(1)住宅本体の取得費用
(2)マンションである場合は持分に係る部分
(3)住宅と一体として取得した電気設備・給排水設備・衛生設備・ガス設備等の付属設備
(4)住宅取得の日以後居住の用に供する日前にした修繕費用

住宅の取得のために支払われる必要な費用
(増改築・宅地・借地権の取得のための費用を除く)

(1)住宅の取得のための周辺費用
 ア.住宅と併せて同一の者から取得した門・塀等の構築物、電気設備・家具セット等の器具、備品、車庫等の建物
 イ.住宅の取得に際し木石類の購入および造園を行った場合で、費用が僅少であると考えられるもの
 ウ.住宅の取得に伴い必要とされる不動産取得税・登録免許税
(2)住宅の取得のために借り入れ、取得等の日から1年以内に一括して償還する条件になっている借入金の返済資金

45.住宅・土地(借地権を含む)の対価の額が区分されていない場合の取扱い

1つの契約により住宅・土地(借地権を含む)を同一の者から購入した場合、対価の額が区分されていないことにより住宅のみの取得価額を算出することが困難なときは、以下の割合で求めます。
 
新築住宅
中古住宅
5年以内
10年以内
15年以内
20年以内
25年以内
25年超



地上4階以上
70/100 60/100 50/100 40/100
地上3階以下
60/100 50/100 40/100 30/100
木造その他
耐火建物以外
50/100 40/100 30/100 20/100 10/100
※共有の場合は、持分に応じて按分します。
※居住用以外の用に供する部分がある場合は、居住用部分の床面積割合を乗じた額とします。

46.持家である住宅の増改築等の工事内容

財形住宅貯蓄の適格払出しの対象となる持家の増改築等の要件は以下のとおりです。
   
工事内容
床面積
費用等



















第1号工事
増築、改築、建築基準法上の主要構造部(壁・柱・床・梁・屋根)の1種以上について行う大規模修繕、大規模模様替
増改築後50㎡以上 増改築等の工事のうち居住用の部分に係る工事費用が全体の工事費用の2分の1以上で、左記費用総額が75万円超
第2号工事
床、階段、間仕切壁、壁の過半について行う修繕または模様替
(マンション等の工事)
第3号工事
家屋のうち居室、調理室、浴室、便所、洗面所、納戸、玄関、廊下のいずれかの一室の床または壁の全部について行う修繕または模様替
第4号工事
建築基準法施行令第3章(構造強度)および第5章の4(建築設備等の強化)の規定または地震に対する安全性に係る基準(耐震強化工事)に適合させるための修繕または模様替
第5号工事
高齢者等が自立した日常生活を営むのに必要な構造および設備の基準に適合させるための通路または出入口の拡幅、階段の勾配の緩和、浴室の改良、便所の改良、手すりの取付、床の段差の解消、出入口の戸の改良、床材の取替のいずれかに該当する修繕又は模様替 (バリアフリーに関する工事)
第6号工事
エネルギーの使用の合理化に資する(断熱性を高める)ための窓、天井等、壁、床等のいずれかの修繕または模様替

47.住宅取得等の場合の払出方法と必要書類

財形住宅貯蓄の払出方法には、「残高の一部払出し」「残高の全額払出し」「口座解約」の方法がありますが、払出事由により制約があります。また、払出時には取得したこと、居住していることを証する書類の提出が定められています。提出書類は原本または写しのいずれでも可能です。

なお、所定の必要書類が提出されなかった場合、要件外払出しの解約となり、解約利子が課税されるとともに、5年遡って、その間に非課税で支払われた利子が課税扱いとなって追徴されます。

(1)住宅の取得、増改築等の払出方法
払出事由
一部払出し
全額払出し
口座解約
住宅の取得または増改築前
○(注)
×
×
住宅の取得または増改築後
○(注)
○(注)
要件外
×
×
(注1)払出しはそれぞれ1回に限られています。
(注2)各種必要書類の中には取得費用がかかるものがあります。


(2)住宅取得時の払出額および提出書類等
払出事由
払出額および提出書類等
住宅取得前の払出し

住宅の取得等をする前に、次の書類を取扱金融機関に提出し、残高の9割または所要額のいずれか低い金額を限度として払出すことができる。

  • 住宅の「工事請負契約書」または「売買契約書」

上記1回目の払出しから2年以内または住宅を取得した日から1年以内のいずれか早い日までに、次の書類を取扱金融機関に提出する。
その際、所要額が1回目の払出額を上回っている場合は、差額以下の金額を払い出すことができる。

  • 住宅の「登記事項証明書」
  • 「住民票の写し」・「住民票記載事項証明書」・「外国人登録原票の記載事項証明書」・「外国人登録原票の写し」のいずれか1点
住宅取得後の払出し

住宅を取得した日から1年以内に、次の書類を取扱金融機関に提出し、所要額以下の金額を払い出すことができる。

  • 住宅の「工事請負契約書」または「売買契約書」
  • 住宅の「登記事項証明書」
  • 「住民票の写し」・「住民票記載事項証明書」・「外国人登録原票の記載事項証明書」・「外国人登録原票の写し」のいずれか1点


(3)増改築等の払出額および提出書類等
払出事由
払出額および提出書類等
増改築前の払出し

増改築等をする前に、次の書類を取扱金融機関に提出し、残高の9割以下または所要額のいずれか低い金額を払い出すことができる。

  • 住宅の「工事請負契約書」

上記1回目の払い出しから2年以内または増改築等をした日から1年以内のいずれか早い日までに、次の書類を取扱金融機関に提出する。
その際、所要額が1回目の払出額を上回っている場合は、差額以下の金額を払い出すことができる。

増改築後の払出し

増改築等をした日から1年以内に、次の書類を取扱金融機関に提出し、所要額以下の金額を払い出すことができる。

  • 住宅の「工事請負契約書」
  • 住宅の「登記事項証明書」
  • 「住民票の写し」・「住民票記載事項証明書」・「外国人登録原票の記載事項証明書」・「外国人登録原票の写し」のいずれか1点
  • 「確認済証」・「検査済証」・「増改築等工事証明書」(注)のうちいずれか1点
(注)「増改築等工事証明書」は工事費用が75万円超100万円以下の場合、「増改築等工事完了届」でも可能。

48.確認済証と検査済証

「確認済証」、「検査済証」とは、住宅の増改築等の工事をしようとする場合にその計画が建築基準関係規定に適合するものであること、または工事が完了した場合に検査を受けて建築物が建築基準関係規定に適合していることを地方公共団体に証明してもらう書類です。

「確認済証」は工事の事前申請による確認後、「検査済証」は工事終了後の申請にもとづく検査後に発行されます。財形住宅貯蓄を増改築等工事費用のため払い出す場合にその他必要書類と共に提出します。

「確認済証」
建築基準法第6条第1項の規定に基づくもので、床面積の増加を含む大規模工事前に図面や書類が建築基準関係規定に即しているかを、建築主事が審査して適合していれば発行されます。

「検査済証」
建築基準法第7条第5項の規定に基づくもので、工事が終了した時点で建築主事またはその委任を受けた当該市町村もしくは都道府県の職員の検査を受け、建築基準関係規定に適合していることが確認されれば発行されます。

49.増改築等工事証明書と増改築等工事完了届

どちらも住宅の増改築等の工事内容の適格性を確認するために提出する書類です。工事費用によって使い分けることができ、第1号工事から第6号工事まで全ての工事の証明に使用できます。財形住宅貯蓄を増改築等工事費用のため払出す場合にその他必要書類と共に提出します。

「増改築等工事証明書」
証明者は、事務所登録をしている1級建築士、2級建築士、木造建築士のほか指定確認検査機関、登録住宅性能評価機関、住宅瑕疵担保責任保険法人のいずれかとなります。
なお、「確認済証」、「検査済証」が発行されていれば、「増改築等工事証明書」は不要です。

「増改築等工事完了届」
工事費用の額が75万円超100万円以下の場合に「増改築等工事証明書」に代えて使用することが可能です。証明内容(対象となる工事内容)は増改築等工事証明書と全く同じですが、比較的工事規模が小さく費用も少額の工事については建築士が係わらないこともあることから、証明者が施工業者で済むよう手続きが簡素化されています。

50. 適格払出し後の財形住宅貯蓄の取扱い

(1)
残高が残った場合
財形住宅貯蓄の残高が住宅の取得等の費用より多額である場合は、適格に払出した後残高が残りますが、財形住宅貯蓄契約は次の住宅の取得等の費用のために継続することになります。
この場合で、その後5年以内に住宅の取得等以外に払い出したときは、不適格払出しとして5年間遡及して追徴課税となりますが、遡及期間内の残高を残した適格払出の利子も課税扱いとなって徴収されますので注意が必要です。


(2)
全額を払出し、残高がゼロとなった場合
財形住宅貯蓄の残高全額を適格に払出した場合、その後の契約の継続に関しては貯蓄商品によって取扱いが異なります。
定期預金では、支払手続きを行うことにより従前の契約が存続し、継続して積み立てることが可能です。契約は継続していることになりますから、55歳を超えていても差し支えありません。
この場合で、その後5年以内に住宅の取得等以外の不適格払出しは、遡及期限は適格な払出しを行った日の翌日までとなります。
他の貯蓄商品では、残高の全額を払い出すためには口座を解約することになり、新たに契約するためには契約要件の55歳未満であることが必要です。


51.単身赴任中に住宅を取得する場合の財形住宅貯蓄の払出方法

契約者が国内または海外での単身赴任中のため、取得する住宅に契約者本人が住めない場合には、配偶者または扶養親族が住むことによって適格払出しが可能です。

提出書類
(1)「財形住宅貯蓄の払出しに係る申出書」
(2)「転勤その他のやむを得ない事情等の証明願い」
(3)「住宅取得等に係わる必要書類(「住民票の写し」は本人のものに代えて配偶者または扶養親族のもの)
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