Vol.1 おすすめマネーコラム

【消費税増税 8%から10%へ】
増税に応じた施策を知り、おトクに買い物しよう

1989年に税率3%の消費税法が施行されて以来、1997年には5%へ、2014年には8%へと引き上げられてきた消費税。そして、来たる2019年(令和元年)10月1日には消費税が10%へアップされる予定です。
過去を見れば、税率の転換期には直前の駆け込み需要が高まり、日用雑貨品や調味料、飲料など長期でストックしやすい物のまとめ買いが増加しました。また、価格差が大きく出やすい住宅や自動車など高価な物を買い急ぐ人も。
ですが、今回の増税では同時期におトクな施策もスタートする予定です。施策の内容を知り、必要な商品を賢くお買い物できたらよいですね。

消費税10%になる、
切実理由

はじめに、増税が必要になった背景を知りましょう。

まず、年々増え続ける「国の借金」は、主に社会保障のために使われており、その返済は現役世代が負担することになります。
さらに、徴収された消費税は国税と地方税に振り分けられるのですが、国税のほとんどは高齢者(老人医療・介護、基礎年金)のために使われている状況です。
現状の社会保障制度については、世代間による負担の格差や恩恵を受ける人の偏りがあります。

  • 「税制抜本改革」で安定財源を確保

社会保障の充実の対象分野

すべての世代が安心感と納得感を得られる、全世代型の社会保障制度へ

  • 改革前の消費税(国分)の使途

    高齢者3経費
    (基礎年金・老人医療・介護)

  • 改革後の社会保障の充実

    社会保障4経費
    (子ども・子育て、医療・介護、年金)

    社会保障の充実 2.8兆円程度の内訳

    • 子ども・子育て

      0.7兆円程度

    • 医療・介護

      1.5兆円程度

    • 年金

      0.6兆円程度

参照:財務省/税制調査会説明資料「税財政の現状等について」をもとに労働金庫連合会作成

こうした立場の違いによる不平等を減らすこと。医療・介護、年金に加えて「子ども・子育て」にも税収を使うこと。
全世代が納得できる社会保障制度を整える財源を確保するために、消費税の増税が決まりました。

おトクな施策

その1

軽減税率

ここからはおトクな施策について、それぞれ見ていきます。
その1つである「軽減税率」は、飲食料品と新聞については税率を10%にせず8%のままで据え置くという制度。

軽減税率の対象となる飲食料品(人の飲用または食用に供されるもの)の範囲 標準税率:外食・酒類・ケータリング等・一体資産・医薬品・医薬部外品等 / 軽減税率:テイクアウト・宅配便・有料老人ホームなどで行う飲食料品の提供

※一定の一体資産は、飲食料品に含まれます。
出典:国税庁「よくわかる消費税軽減税率制度」

飲食料品とは、食品表示法に規定される食品をいい、人の飲用または食用に供されるもので、日常的なものでは、野菜・鮮魚・精肉などの生鮮食品や、加工食品、牛乳やお茶などの飲料を指します。ただし、酒類と医薬品などは含まれません。また、「一体資産(おもちゃ付きのお菓子など)」については、軽減税率が適用されないケースもあります。
デイリーで使う飲食料品については、基本的に事前の買いだめは不要と思われますが、ほしい商品が酒類に含まれるかどうかはよく見ておくのがおすすめ。

酒税法では「アルコール分1度以上」の飲料を「酒類」と定義しています。そのため、「ノンアルコールビール」やアルコールを微量しか含まない「甘酒」は酒類とされず、8%が適用。度数が低ければ「みりん風調味料」や「料理酒」も8%になりますが、「本みりん」は酒類なので10%が適用される点にご注意ください。
アルコールの度数はメーカーによって様々ですが、酒類になるもの(10%適用)は事前購入しておくとよさそうです。

外食・ケータリング等

外食やケータリング等は、軽減税率の対象となりません。

※テイクアウトや飲食料品の出前・宅配等は、軽減税率の対象となります。

  • 標準税率対象外食とは…

    飲食店営業等、食事の提供を行う事業者が、テーブル・椅子等の飲食に用いられる設備がある場所において、飲食料品を飲食させる役務の提供

    軽減税率対象テイクアウトは…

    飲食店業等が行うものであっても、テイクアウトは、単なる飲食料品の譲渡であり、軽減税率の対象

    ※「外食」か「テイクアウト」かは、飲食料品を提供する時点で、顧客に意思確認を行うなどの方法で判定します。

  • 標準税率対象ケータリング等とは…

    相手方が指定した場所において行う役務を伴う飲食料品の提供

    軽減税率対象出前・宅配は…

    出前・宅配等、単に飲食料品を届けるだけのものは、軽減税率の対象

出典:国税庁「よくわかる消費税軽減税率制度」

続いて、料理として提供される飲食料品の購入についてですが、8%の軽減税率が当てはまるのは「テイクアウト・宅配」などで、10%になってしまうのが「外食」「ケータリング」などです。

8%適用のポイントは、「購入後、単に譲渡されるだけ、または届けてもらうだけかどうか」という点。購入後、食事するための場所や設備を提供してもらう場合などは10%になります。
そのため、カレーのテイクアウトやピザ・お寿司の宅配などは8%のままで、レストランでの食事や料理人にケータリングを依頼して自宅でホームパーティーなどの場合は10%が適用されます。

同じく、コンビニなどのお店で購入して持ち帰るなら8%が、購入後そのままイートインコーナーで食べていくなら10%が課税されます。

その2

キャッシュレス・消費者還元事業
(ポイント還元事業)

軽減税率に加えて、ぜひ活用していきたい施策は「キャッシュレス・消費者還元事業(ポイント還元事業)」。

登録している中小・小規模事業者の営む商店にて、キャッシュレス決済で買い物や飲食をすると、なんと購入額に応じて5%ものポイントが還元されます。消費税は実質5%ほどになり、現状の8%よりもおトクになってしまうという夢のような施策です。
(※中小・小規模事業者とは、小売業の場合「資本金の額または出資の総額が5千万円以下の会社または、常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人事業主」のこと)

軽減税率との合わせワザでお買い物をするとさらにおトクに。増税後も8%で据え置きの飲食料品をキャッシュレスで支払えば、実質3%ほどでの購入が可能です。
また、大手のフランチャイズなどの商店でも2%は還元するので、増税前と同じく実質8%ほどでお買い物ができます。

ちなみにキャッシュレス決済とはクレジットカードや電子マネー、デビットカード、QRコードなどによる支払い手段のこと。こちらの施策は2019年10月から2020年6月までの9ヶ月間で実施される予定です。

参照:経済産業省「キャッシュレス・消費者還元事業(ポイント還元事業)の概要」

その3

住宅ローン減税の控除期間延長と、すまい給付金など

8%から10%へ、その2%の差が大きく影響するのが、住宅を購入する場合。こちらについても増税の負担を軽減する施策が用意されています。

まず、事前知識として、住宅価格は「土地代+建物代」で表されますが、土地代には消費税がかかりません。また「個人」が売主の中古住宅を購入する場合も非課税となります。不動産会社などの事業者が買い取って再販する中古住宅には消費税がかかるのでご注意ください。

さて、重要な施策についてですが、第一に「住宅ローン減税」の控除期間が10年から13年に延長されます。「住宅ローン減税」とは、毎年の住宅ローン残高の1%を所得税から控除する制度(一般住宅の場合、最大40万円を上限/年)。延長できる条件は、消費税率10%が適用される住宅を取得して、2019年10月1日〜2020年12月31日の間に入居した場合です。

参照:国土交通省「平成31年度税制改正 消費税率引上げを踏まえた住宅取得対策」

消費税率引上げに伴う住宅取得者の
負担増と給付の関係

▲「すまい給付金」のイメージ

出典:国土交通省ホームページ「すまい給付金」

加えて、「すまい給付金」にも優遇策が登場。「すまい給付金」とは、収入が少ないと恩恵が受けづらい「住宅ローン減税」を補完し、できるだけ多くの人が格差なく優遇を受けられるようにする制度です。住宅ローン減税との併用で、収入に応じて給付を受けることができます(50歳以上であれば住宅ローン減税を利用しない人でも申請可能)。
これまでは収入が510万円以下の人が対象でしたが、増税後は収入が775万円以下の人が対象になり範囲が拡大。増税に伴う負担増加分を緩和するよう給付されます。こちらは2021年12月まで実施の予定。

給付額

住宅取得者の取得時に適用される消費税率に応じ設定されています。
収入額(都道府県民税の所得割額)によって給付基礎額が決まり、給付基礎額に登記上の持分割合を乗じた額(千円未満切り捨て)が給付されます。

給付額=給付基礎額【収入額の目安(都道府県民税の所得税額)によって決定】 × 持分割合【建物の労基事項証明書(権利部)で確認します。】 給付額=給付基礎額【収入額の目安(都道府県民税の所得税額)によって決定】 × 持分割合【建物の労基事項証明書(権利部)で確認します。】

そのほか、「次世代住宅ポイント制度」を新たに創設。一定の省エネ性、耐震性、バリアフリー性能などを有する住宅の新築やリフォームに対して、さまざまな商品と交換できるポイントを付与します。新築は最大35万円相当、リフォームは最大30万円相当。消費税率10%が適用される住宅を取得するにあたって、2020年3月31日までに契約を締結した場合が対象となります。

参照:国土交通省「平成31年度税制改正 消費税率引上げを踏まえた住宅取得対策」

その4

自動車税、自動車取得税の新制度

自動車税と自動車取得税も増税に合わせて変更になります。

まず、2019年10月1日以降に初回新規登録を受けた自家用の乗用車(登録車)を対象に「自動車税(種別割)」の税率を引き下げることになりました。(排気量に応じて変動。引き下げ前と比べて差額は最大4,500円)

※軽自動車税(種別割)の税率は変更なし。

また、購入時にかかる「自動車取得税」を廃止して、新たに「環境性能割」を導入します。新車・中古車を問わず、燃費性能などに応じて自家用の登録車は0〜3%の間で税率が変動。(軽自動車は0〜2%に)電気自動車など、各種条件を満たす場合は非課税になり優遇されます。なお、2019年10月1日〜2020年9月30日(1年間)までの間に自家用の乗用車を購入する場合は、「環境性能割」の税率が1%分軽減されます。

今後、電気自動車を長期にわたって使用する予定ならば、増税後に購入するのもよいかもしれません。

参照:総務省ホームページ「2019年10月1日、自動車の税が大きく変わります」

その5

幼児教育無償化

子育て世代にうれしい施策も行われます。それは、幼児教育の無償化。

消費税増収分を活用し、主に3〜5歳について、幼稚園・保育所・認定こども園・地域型保育・企業主導型保育の利用料を原則無償化(一部例外あり)します。0〜2歳については、上記施設を利用する住民税非課税世帯を対象として無償化されるとのこと。

全世代が納得できる社会保障のかたちに少しずつ近づいています。

参照:内閣府・文部科学省・厚生労働省「幼児教育の無償化について」

買い物のポイント

その1

値崩れしやすいか

最後に、「増税前に購入するかどうか」の参考となる基準をいくつかご紹介します。その1つは「値崩れしやすいか」という基準。値崩れしにくいようなら増税前に、よく値引きされているようなら増税後に買っても問題はなさそうです。

例えば、プリンターのインクカートリッジや空気清浄機のフィルターなど「交換品」とされるものは、値引きしなくても売れるので値崩れしづらい傾向にあります。一方で、多くの人が日常的に必要とするトイレットペーパーや洗剤などは、来店のきっかけづくりにもなるためセールで値引きされやすい商品です。

家電でいえば、冷蔵庫などの白物家電は値崩れしづらく、テレビ・レコーダーなどの黒物家電は値崩れしやすいとされています。

また、ダイソンの掃除機やLeicaのカメラなど、高級ブランドの製品も値崩れしにくいので増税前の購入を検討してもよさそうです。書籍も価格がブレないので、気になる本があれば増税前に買っておきましょう。

その2

有効期限を活用

また、中には購入してすぐに使用しなくてよい商品もありますね。
定期券や回数券、テーマパークのチケットなどです。増税後にそれらを使用する予定があるなら、増税前に購入しておくのがおすすめ。
例えば、9月の時点で、いつもなら1ヶ月分の定期しか買わないけれど今回は3ヶ月分購入しておくなど、使用可能な期間をうまく活用して購入を検討しましょう。

消費税増税に備える

10%に増税するからといって焦って何でも購入してしまうと、かえって損をしたり無駄遣いをすることになってしまいます。
「これは、今買うほうがいいのか」。それぞれの施策を見比べながら、賢くお買い物をしましょう。

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