財形貯蓄Q&A 共通事項

1.財形貯蓄ができる勤労者の条件

財形貯蓄は勤労者のみを対象にした優遇貯蓄です。勤労者とは「職業の種類を問わず事業主に雇用される者」(勤労者財産形成促進法第2条)をいいます。労働基準法の労働者の概念とほぼ同義ですが、公務員も対象になるため労働者ではなく勤労者という用語が使用されています。

財形貯蓄は勤労者が会社や団体等を介して行う貯蓄で、勤労者以外は契約できず、たとえ勤労者であっても個人で直接取扱金融機関に申し込むことはできません。財形貯蓄を契約できるのは、財形制度を採用している会社や団体等の勤労者に限られます。

事業主は法人でも、個人でも差し支えなく、個人事業主に雇用される者が1人であっても、財形貯蓄を契約できる勤労者となります。なお、家計を同じくする個人事業主の配偶者は、事業主に雇用される形で働いていても勤労者性はないとされています。

2.財形貯蓄を賃金控除で行う理由

財形貯蓄は、勤労者が所得の源泉である賃金(給料・賞与・手当その他名称のいかんを問わず勤労の対償として事業主が勤労者に支払うもの)の一部を定期に積み立てることを国が税制上の優遇等で支援する制度です。

したがって、財形貯蓄として積み立てた金銭が賃金の一部であることを担保するため、事業主が勤労者の依頼に基づき賃金から控除した金銭を勤労者に代わって当該勤労者が契約した取扱金融機関へ払い込みます。

3.賃金控除以外の金銭の積立て

賃金控除以外の金銭で財形貯蓄に積立てできるものには、財形給付金・財形基金給付金の満期給付金、貯蓄奨励金、転職時等の預替え解約金があります。

一般財形貯蓄のみ積み立てを認められているものとしては、廃止された社内預金、取扱金融機関を替えることによる預替え解約金、退職金があります。

なお、退職金は、退職後同一会社へ嘱託等で継続勤務する場合に限り積立てすることが認められています。

4.制度導入時の労使協定の必要性

財形制度の採用のためには労使協定が必要です。
財形貯蓄の積み立ては、事業主が勤労者の賃金から控除し、勤労者に代わって取扱金融機関に払い込むことが要件(賃金控除・払込代行)であり、賃金控除のためには労使の合意が必要だからです。

賃金は労働基準法第24条で全額払いが定められていることから、労使代表による協定(書面)を締結し、当該規定の適用を排除することになります。労働者側は従業員の過半数で組織する労働組合があれば当該労働組合が、労働組合がない場合は従業員の過半数を代表する者が当事者となります。

実務上は、協定内容を労働協約、就業規則等に盛り込んでおくことになります。すでに賃金控除の協定がある場合は、財形貯蓄に関する項目を付加することで足ります。

なお、公務員については、労使協定がなくても国または地方公共団体が賃金控除することができます(勤労者財産形成促進法第15条)。

5.財形制度の実施単位

財形制度は労働基準法上の事業場単位で実施することが可能です。たとえば、本社と工場と別々に制度を実施することも可能になります。

しかし、人事異動があることなどを考慮すれば、全社同一の制度で実施することが望ましく、通常は会社や団体等単位で実施することになります。

6.財形事務処理の外部委託

財形制度の管理運営事務を関連会社あるいは専門の事務代行会社へ委託することについては特に問題はなく、その性質上事業主のみが行いうる勤労者の賃金からの控除や財形給付金、財形基金の拠出を除き、企業規模に係わらず民法の委任契約に基づいて第三者に業務委託することが可能です。

7.財形貯蓄での取扱金融機関による本人確認

取扱金融機関は預金の受入れ等の取引の際、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(平成19年法律第22号)に基づいて顧客の本人確認を行うこととされており、財形貯蓄も本人確認の対象です。

同法はテロ資金やマネーロンダリングの排除が目的ですが、職域取引の財形貯蓄にはこれらの犯罪性がないため、国等の金融取引に準じて、契約者本人の確認に代えて企業担当者(現に財形事務を担当する者、業務を委託している場合は委託先の担当者)の本人確認で足りることになっています。

本人確認は取引開始時に一度行えばよく、担当者が異動しても新たな本人確認は不要です。本人確認方法は事業主からの財形事務担当者の届出と当該担当者の印鑑登録証明書、戸籍謄本・抄本、住民票の写し、健康保険証、運転免許証などの公的書類を取扱金融機関に提示することにより行います。
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