適格退職年金

企業が従業員に退職年金(または一時金)を支給することを目的に、税制上の優遇を受けて、社外に資産を積み立てる制度です。法人税法に定められている14の適格条件を満たすことにより、税制上の優遇措置を受けられましたが、受給権の保護に問題があり、2012年3月末で制度は廃止されました。

適格退職年金の概要

設計の自由度が高く、規約型確定給付企業年金のモデルとなった制度

適格退職年金(税制適格年金ともいう)は、昭和37年に法人税法と所得税法の改正によって設立された企業年金制度のひとつです。わが国を代表する企業年金制度として厚生年金基金と人気を二分し、最大時には1,000万人以上の加入者を抱えていました。

適格退職年金は、前述した規約型確定給付企業年金に似ています(正確にいえば、適格退職年金をモデルに規約型確定給付企業年金が作られている)。
事業主が定めた適格退職年金規約に基づき、契約した信託銀行・生命保険会社に掛金を納付します。掛金は外部積立の体制が整い、会社の資金繰り等に用いることはできなくなります。
中途退職者、定年退職者等は外部積立をしている受託金融機関から年金ないし一時金を受取ります。

適格退職年金では設計の自由度が高く、中小企業にとっては運営のしやすい制度として重宝されていました。例えば、終身年金を必ずしも求められず5年以上の有期年金であればよかったり、中途退職者は一時金で会社が支払い、定年退職者のみ適格退職年金から支払うといった制度設計も可能でした。確定給付企業年金では、加入者の受給権を厳密に管理する立場を取っているため、受給権がゼロになることはほとんどありません(懲戒解雇等のケースを除く)。

労働組合の関与が弱かった適格退職年金のガバナンス

監督・指導体制や従業員への情報開示が不十分であった

しかし、適格退職年金にも問題がありました。それは制度運営を適切に行わせるための監督体制や法規制が弱いことです。
「適格」の意味は制度の設計が要件を適格に満たしており、その掛金は損金算入を認められる、という意味合いで、国税庁が企業年金積立てが適法であることを監督する立場でしたが、主眼は脱税の有無のほうにあり、受給権を確保させるための監督・指導体制に欠けるところがありました。

たとえば、積立不足が生じた場合の追加拠出体制などは、民間のチェック体制に任されており、一部では、本来有すべき資産の半分くらいしか積立てを行っていない例が見受けられるようになりました。制度設計上は年金受取りが可能であるにも関わらず、実務上は退職者のほぼ全員に一時金受取をさせている企業もあったとされます。
情報開示の体制も不十分であり、制度設計の内容や財政状況が従業員に周知されていないところがほとんどでした。

1990年代後半に低金利環境が続き、積立不足が拡大すると、こうした問題点が憂慮され、制度の見直しが議論されるようになりました。
ほぼ同時期に厚生年金基金は厚生労働省(当時は厚生省)が規制緩和を行うと同時に監督体制を強化する取組みを強めたことから、これを活かした新制度が設けられ、適格退職年金は一定年月をもって廃止されることとなりました。

適格退職年金の移行の仕組みと動向

2012年3月末での制度廃止にあわせて他の年金制度への移行が可能になった

受け皿となったのが確定給付企業年金法です。2002年4月から、2012年3月末までの10年間が制度移行期間と定められました。企業年金に関する法令が整備され、適格退職年金制度は「確定拠出年金」「確定給付企業年金」「中小企業退職金共済」「厚生年金基金」のいずれかに移行できることとなりました。それぞれの制度への移行の特徴は以下のとおりです。

各制度への移行の特徴
確定給付企業年金

規約型の確定給付企業年金制度は仕組みとして適格退職年金の構図をほぼそのまま用いており、積立不足の償却やほとんどの制度設計を引継いで移行ができます。また、財政検証が強化されるなど、適格退職年金より制度運営が厳しく求められるようになるので、受給権保護の体制は強化されます。

確定拠出年金

積立不足のない状態を作り、ひとりひとりに持ち分が分割され、個人資産として管理・運用される仕組みです。積立不足分については穴埋めをするか、減額をするか、同水準の退職一時金制度を創設するなどして対応します。また自己責任による資産運用が求められるという大きな変化が生じます。

中小企業退職金共済

勤労者退職金共済機構が実施する共済制度にひとりひとりの過去の資産を引継ぎ、その後の管理・運用を肩代わりしてもらうことができます。中小企業退職金共済は積立不足の部分を引継ぐことができないので、積立不足の部分については各社で減額するなり退職一時金を同水準創設するなどで対応します。

厚生年金基金

適格退職年金から厚生年金基金に制度変更ができます。これは確定給付企業年金法以前から可能だったものです。適格退職年金の移行期間においては、総合型の厚生年金基金が適格退職年金の積立分を引き受ける例が見受けられました。

守られた企業年金、消えた企業年金

制度廃止期限までにおよそ4割が解散・終了となり、年金資産途絶が懸念される

適格退職年金の移行期間は2012年3月末をもって終了しました。10年間の移行状況についてはおおむね「中退共へ3割、確定給付企業年金へ2割、確定拠出年金へ1割」になっています。適格退職年金を利用した企業に中小企業が多かったこともあり、中退共が最も多かったほか、規約型の確定給付企業年金が多く利用されています。

ところで、上記の移行割合を合計しても6割にしかなりませんが、およそ4割については「解散・終了」したものとされています。もしかすると、過去の制度は終了し、ゼロから新しい企業年金制度をリスタートした会社や、会社が倒産したため新設されなかったケースもあるものと思われますが、それらを考慮しても高い割合です。

企業年金制度に加入している加入者数の合計を統計でみると、その合計数はこの10年で300万人ほど減少しており、決して少なくない勤労者、特に中小企業の勤労者の企業年金資産が途絶したものと考えられています。これは大きな問題です。
こうした出来事が今後も繰り返されることのないよう、労働組合がしっかり企業年金を監督をしていくことが求められています。

[適格退職年金の移行状況]イメージ

適格退職年金 <まとめ>

税制上の優遇措置を受けられる制度
法人税法に定められている14の適格条件を満たすことにより、税制上の優遇措置を受けられます。例えば、企業の拠出する掛金は損金算入されるほか、加入員の掛金負担があれば生命保険料控除として扱われます。
自由度が高い反面、監督体制が不十分であった
年金の給付水準は原則自由で、有期年金・終身年金・一時金などは問いません。制度設計の内容や財政状況が従業員に周知されていないことが多くありました。
2012年3月末をもって制度廃止となった
近年の低金利という厳しい運用環境の中、積み立て不足が拡大したため制度廃止が検討され、10年間の制度移行期間を経て、2012年3月末に廃止となりました。
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