厚生年金基金

単独または複数の企業で設立した厚生年金基金が、国の厚生年金の一部を代行し、あわせて、企業独自の給付を上乗せして支給する企業年金制度です。国の厚生年金の部分を「代行部分」、企業独自の給付の部分を「プラスアルファ部分」といいます。設立形態としては、単独型、連合型、総合型の3種類があります。
なお、2013年6月の厚生年金保険法の改正により、代行割れ基金の早期解散・他制度への移行が促進されることになりました。

厚生年金基金の概要

企業から独立した特別法人が管理・運用・給付を行います

厚生年金基金とは、昭和41年にスタートし、50年近い歴史を有する企業年金制度です。呼び方は「厚生年金基金」なので、国の厚生年金の一部と誤解されることが多いのですが、制度の本質は企業が運営する企業年金です。

厚生年金基金の特徴は、「国の厚生年金の一部」と「企業独自の企業年金部分」を民間サイドでひとつにまとめて積立て・運用・管理を行うところにあります。国の厚生年金の一部を厚生年金基金で管理する部分については代行部分と呼ばれ、企業独自の企業年金部分をプラスアルファ部分(あるいは加算部分)などと呼びます。

厚生年金基金は、企業から独立した法人格をもつ特別法人です。毎月の掛金は事業主が拠出した時点で基金が預かり、管理・運用・給付までの責任を持ちます。しかし、制度運営の事務局にスタッフを出したり、積立不足が生じた場合に追加拠出をするなど、企業も基金の制度運営に深く関わります。
厚生年金基金は、厚生労働省が所轄しており(根拠法は厚生年金保険法に含まれる)、その設立を認可し、年度の決算報告を受け、財政状況の健全性が悪化した基金については指導をするなど、制度が継続的に運営できるための監督・指導を行います。

[厚生年金基金の仕組み]イメージ・[基金の設立形式]イメージ

代行制度と国の厚生年金との関係

国の厚生年金の一部を代行して運用するので、スケールメリットを活かせます

厚生年金基金の仕組みが複雑である理由のひとつに、国の厚生年金の一部と企業年金の部分がひとつの制度に併存している点が挙げられます。

厚生年金基金に加入していた人は、国の厚生年金のうち、代行部分相当を厚生年金基金から、残りの部分を国からそれぞれ受取ります。合計した額については、厚生年金基金に加入せず、国から厚生年金のみを受け取る場合と同水準になります(厳密には、基金に加入していた方がわずかに上回る)。

2013年3月末現在、過去分まで代行返上をした基金の数は850にまでのぼり、返上後に新制度へと移行しています。

民間で国の厚生年金保険料の一部を代行して運用することで、スケールメリットを活かした資産運用が行え、トータルでは国の厚生年金を上回る給付を行うことが可能になったほか、厚生労働省が監督を行うことで、一定以下の積立水準にならないよう財政状況の検証も行えることがメリットでした(一方、当時普及していた適格退職年金は行政の監督体制が弱いことが問題でした)。

しかし、現在では確定給付企業年金制度が創設(2002年4月施行)されたこと、国の代行部分にかかる積立不足も、退職給付会計上の退職給付債務として企業の債務とみなされたこと、資産運用が著しく悪化し継続が困難である基金が生じたことなどから、代行返上による制度の終了(この場合はDB制度が存続)、解散の道を選択したことによる制度の終了などが相次ぎ、制度の有り様は大きく変化することになりました。

プラスアルファ部分(加算部分)のしくみ

企業が独自に給付設計できる「プラスアルファ部分」があります

厚生年金基金は国の厚生年金を代行するところから制度がスタートした歴史的沿革から、国の厚生年金に若干の上乗せをする給付設計(付加部分、薄皮部分などという)と、独自に自由に給付設計する部分(加算部分)があります。これらを総称して「プラスアルファ部分」などと呼ぶこともあります。

上乗せ部分については、国の厚生年金の計算式に則り、一定率を掛金として上乗せ、同率を給付においても上乗せするようなシンプルな仕組みで企業年金を作ります。近年では加算部分を用いた設計が主流で、上乗せの割合は厚生年金に+1%程度ということもあります。

加算部分については各社が独自に設計できる部分であり、必要な給付水準に見合う掛金を設定し、積立て、運用を行います。また、終身年金の給付設計が求められているのも特徴で、国の年金に加えて終身年金が退職後の生活の大きな支えとなります。
全てを終身とする必要はないため、一部を終身年金、一部を有期年金とする例も多く見受けられます。この場合、退職後の生活の後半は受給額が低くなりますが、前半に手厚い年金を受取ることが可能になります。

単独型基金、連合型基金のしくみ

単一の企業が設立する単独型、グループ企業等が設立する連合型

厚生年金基金はその設立形式により、単独型、連合型、総合型に区別できます。この区別は制度の現状にも関連していますので、簡単にポイントを紹介します。

単独型基金とは、単一の企業が設立する厚生年金基金です。設立時点で1,000人以上の加入員規模を要件とされるなど、主に大企業が自社の企業年金制度をカバーする目的で設立しています。
連合型基金とは、企業グループなど資本関係が緊密な企業群がひとつの厚生年金基金を設立する形態です。一般には親会社とグループの子会社が共同して設立します。
これも設立時点で加入員規模1,000人以上を要件とするなど、大企業のグループで多く用いられてきました。

単独型基金、連合型基金については、退職給付債務の対象として国の厚生年金の代行部分もカウントされることが決まったことから、代行返上が進みました。2002年3月末時点で、単独型基金506、連合型基金605が設置されていましたが、2012年3月末現在において単独型基金は34、連合型基金は49と大きく減少しています。

総合型基金の仕組み

資本関係のない企業が共同して設立する総合型

厚生年金基金の設立形式のもうひとつが総合型の厚生年金基金です。総合型の厚生年金基金は、業界団体や地域団体、業界で実施している健保組合などへ加入している複数の中小企業で設立されます。連合型基金は資本関係のある複数の会社で設立されますが、総合型基金は資本関係のない企業が協同して設置するところに大きな特色があります。

単独の企業が充実した企業年金制度を構築し、管理・維持することは困難であるため、業界団体などが主導して中小企業に企業年金を提供する受け皿として重要な役割を担ってきました。
資産運用においても複数の事業所の年金資金がひとつにまとまることでスケールメリットのある運用が行えるほか、運用を専門家に協同委託できる面もメリットでした。

しかし、業界の景況感が悪化すると基金に加入するすべての事業所の業績も悪化し、同時に掛金などの負担能力が低下してしまうことなどが総合型基金の悩みでした。
業界としてピークを過ぎてしまった厚生年金基金が解散の道を選択するなどして、2012年3月末現在において総合型基金は494となっています。

厚生年金基金の資産運用

市場の変化により運用環境は厳しく、積立不足が問題となっています

厚生年金基金の資産運用は、それぞれの厚生年金基金ごとに運用方針を定め、生命保険会社、信託銀行、投資顧問会社を活用しながら運用が行われます。
運用の基本方針については、基金に設けられた運用委員会あるいは理事会等で承認を行うなどして、個人の相場観のみによらずに運用が安定的に行われることが求められます。

1980年代から1990年代前半にかけては、高金利の環境下において、代行部分の運用益が実際に必要な利回りを上回っていたことなどから、効率的に企業年金制度を運営する選択肢として大きく普及しました。しかし、バブル崩壊以降の景気悪化や運用利回りの低迷に伴い、むしろ国が定めた厚生年金基金の目標運用利回り(当時は年5.5%だった)を下回る状態に陥りました。

積立不足は加入企業が負担して償却しなければならないため、企業にとっては運用メリットならぬ運用デメリットが生じるようになります。こうした状態を改善すべく資産運用の取り組みも、新しい投資対象の組み入れ、新しい投資手法の選択などを行いながら、運用の高度化が進められています。

現在は国の厚生年金の代行部分については財政の中立化が図られており、国の年金運用の実績と同水準を得られれば、積立不足は生じないものとされています。
しかし、専門家を多数擁し、約100兆円というスケールメリットを活かした公的年金運用と比べると、数十億から数百億円規模の多い厚生年金基金が同水準の運用管理を行うことは難しいのも実情です。また企業独自の企業年金部分については高い目標利回りを設定している例が今でも見受けられ、運用のノルマの高さがハードルとなっています。

2012年3月末時点において、積立不足(継続基準)を抱えている基金は495、その合計額は2兆0,009億円となっており、代行部分の資産の確保すら困難な状況です。

厚生年金基金の今後の動向

代行割れの基金は早期解散・他制度への移行が促進されることになりました

厚生年金基金については、代行部分の資産を安定的に確保することが困難になっている運用環境下において、もし解散になった場合、国の厚生年金財源にも負担を求められることなどが指摘されています。
解散時に代行部分にも積立不足が生じているということは、本来の企業年金部分に必要な原資も確保できていないということですから、プラスアルファ部分の給付にも影響が生じることになります。

AIJ投資顧問会社の運用資産消失問題を受け、さまざまな取組みが進められています。厚生年金基金の運用体制強化などの施策が実現したほか、代行割れの厚生年金基金の早期解散および他の企業年金へ移行を促すことを柱とする厚生年金保険法の改正法案が2013年6月に成立しました。

これにより、代行割れの基金は早期の解散が促され、代行割れ予備軍の基金は施行後5年以内の制度移行が促されます。財政状況の良い一部の基金は存続が認められますが、基本的にはDBやDC、中退共への移行が発生する見込です。

また、政府が10年以内に基金制度を廃止することを検討することも決まっており、今後の動向には注意が必要です。

厚生年金基金 <まとめ>

厚生年金の一部を代行し、スケールメリットを活かした運営が可能
厚生年金基金は、国の厚生年金保険料の一部を代行して運用することで、スケールメリットを活かした資産運用が行え、トータルで国の厚生年金を上回る給付を行うことが可能です。
積立不足の問題は総合型が中心
総合型は中小企業が中心となっているので、追加の資金力に乏しく、積み立て不足が発生しやすい構造になっています。
厚生年金基金は解散・移行が促進されます
適年廃止の際には、新制度を設けずに解散終了によって企業年金が失われるケースも多くありました。今回の法改正で同様の事態にならないよう、労働組合としても適切な制度移行をしっかりと確認していく必要があります。
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