DC制度移行の留意点

DC制度は、新設だけではなく他制度から移行して設立することもできます。今後、発生するであろう将来分の掛金をDCで積上げていくだけでなく、過去、他制度で積上げてきた資産をDCに引継ぐことも認められており、退職一時金、確定給付企業年金、厚生年金基金の各制度から資産の移換が可能です。

DC制度へ資産の移換を行う場合は、その詳細について規約に明記する必要があります。ここでは、DC制度への移行についてのポイントをまとめてみます。

制度移行の全般的注意点

ひとたびDCに移行すると他の制度に戻すことはできません

第1に、DC制度へ移換した後で、他の制度へ資産を戻すことはできません。
今までは、現役従業員もOBも合わせて会社全体でひとつの口座で運用管理していたものを、DCをスタートさせた後はひとりひとりの持ち分として分割して管理することになるためです。例えば「DB→DC」という資産の移換は可能ですが、「DC→DB」という資産移換は認められません。

DCを導入すると他の制度を導入できないというわけではありません。
DCの資産は他の制度には移換できませんが、将来分の掛金は他の制度で積立てることはできます。

積立不足があってはいけません

第2に、DC制度へ移換するに当たっては、積立不足のない状態にすることが求められます。
企業年金制度では、中長期的な運営を前提に、一定程度の積立不足が生じることや、複数年度にわたって償却を行うことが認められています。しかし、DC制度に移行した後は、ひとりひとりに受給権が引き渡されることになり、その後は自己責任で運用することになります。
ひとりひとりの口座に積立不足を引き渡すことは認められないのです。

退職一時金からの移行

退職一時金からの移行の場合、単年度での移換は法令上認められていません

退職一時金制度を見直し、その一部ないし全部をDCに移行することができます。会社にとっては退職給付債務が減少する、従業員にとっては外部積立制度が確立するというメリットがあります。

制度移行日までの間に従業員が獲得してきた退職一時金を受ける権利をどうDC制度に引継ぐかは、規約に定めます。

[退職一時金からの移行]イメージ

一般的には、退職金規定で定められた退職一時金の支給額を減額(もしくは、退職金規定を廃止)すると同時に、減額された分を支給額とするDC規約を新たに作成します。ただし、実際にDCに移換する過去分の金額は、自己都合要支給額がベースとなります。
例えば、退職一時金1000万円のうち40%をDCに移行する場合を考えると、自己都合要支給額が800万円であれば、320万円をDCに移換します。
一般に自己都合退職をする場合、退職金が減額されることが多いわけですが、DCへ資産を移換する場合は実際には離職しないわけで、働き続ける従業員の資産の移動において不利益が生じないよう、退職金規程を改定するなどの対応が必要です(例えば3月31日に不利益がないよう退職金規程を改定、4月1日にDC制度に移換する等の工夫を凝らす)。

退職一時金制度を採用している企業の多くは、今まで計画的に全従業員の受給権の掛金を積上げていないことがほとんどです。そのため、移換に際して会社がしっかり資金繰りを行い原資を確保できるかどうかも確認する必要があります。

なお、過去の権利をDCに移換する場合、4~8年度のいずれかで分割して資産を移します。単年度での移換は法令上認められていません。

確定給付企業年金および厚生年金基金からの移行

確定給付企業年金および厚生年金基金からの移行の場合、現行制度の減額・終了の際も労使合意が必要です

DB制度や厚生年金基金制度からもDC制度へ、一部ないし全部の資産移換を行う制度変更が行えます。

一部をDC制度へ移換する場合、現行制度の側からみると給付が減らされる(仮に同水準の資産がDCへ移るとしても)ことから、給付減額の手続きを求められます。全部をDC制度へ移換する場合も、現行制度が終了することとなるため、制度終了の労使合意が必要となります。

つまり、現行制度の減額・終了に関する同意と、DC制度の設立に関する同意について、労使合意を行い、DCへ資産を移換することとなります。

DC制度へ移換する額は現行制度の数理債務の額、最低積立基準額を下回ってはなりません。これは簡単にいえば積立不足のある状態で移換はできないということで、制度の移行に当たって積立不足のある場合は何らかの対応をもってその解消を行う必要があります。

もっとも単純な方法は、積立不足を一括して償却することです。しかし、多くの企業では全額の積立不足を解消することが困難であることから、積立不足相当分の給付を引下げ、積立不足のない状態を作り出し、DCへ移換することが行われます。一部分を会社が償却し、一部分は減額するようなケースも見受けられます。

このとき、給付の引下げ分については、制度の移行後に退職一時金制度として給付を復活させなければ、純粋な減額となってしまいますので、労働組合としてはその取扱いについてしっかり確認することが必要です。

DBからの移行のイメージ

厚生年金基金からの移行

厚生年金基金からの移行の場合、総合型からは一括移換を行うことができません

法令が定めているのは単独企業あるいはグループ会社で設立されている単独型・連合型の厚生年金基金からのDC移換です。業界団体で設立され中小企業が複数加入している総合型の厚生年金基金については、全加入者を対象とした一括のDC移換は行えないものとされます。

この場合、厚生年金基金を脱退した際に、年金受給権がない従業員の資産を企業年金連合会に移換し、さらにDC制度に移換(ポータビリティ)することは可能ですが、全従業員に強制をすることはできません。また、すでに年金受給権がある場合、その厚生年金基金に資産は留め置かれることになります。将来の制度についてDC制度に一元化をはかることは可能ですが、過去の資産も含めた制度の連続性は絶たれることになりますので、注意が必要です。

なお、今後の法改正の動向によっては、総合型厚生年金基金からDC制度への資産移換について何らかの規制緩和が行われることも想定されます。

DC制度移行の留意点<まとめ>

DC制度へ移行すると、他の制度への移行はできません
DCに移行した後は、資産は加入者ごとに分割して管理されるので、他の制度へ移行することができません。ただし、過去分が個人資産となり受給権が確定するので、給付減額などの影響を受けないことも特徴です。
積立不足がないことが条件です
加入者ごとに管理されている口座に、積立不足分まで引き渡すことは認められません。その積立不足をどのように解消するかは、労使でしっかり協議する必要があります。
一部移行も可能です
現行制度のうち、50%だけをDCに移行するといったことも可能です。会社側の提案が100%DC移行だとしても、その妥当性を検証して50%移行を主張することも交渉としてありえます。
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