1)
自己責任制度であることの認識
この制度は「自己責任」「自主的な努力」が前提とされ、公的年金を補完するものとして位置づけられていることをすべての組合員が十分納得する必要があります。メリットに対するデメリット、リターンに対するリスクのすべてが自己責任として位置づけられているのです。
2)
情報開示
既存の税制適格年金や厚生年金基金は非常に厳しい財政状況におかれていますが、それらの資産運用には専門的知識を要求されることもあって、どちらかというと労働組合は企業まかせ、基金まかせの対応であったといえるでしょう。新制度の導入に当たっては、今日のような厳しい状況が再び繰り返されることがあってはなりません。不断の情報開示を求め、制度的にも労使専門委員会等の設置が必要です。
3)
給付水準
現行退職金との比較、想定運用利回り、掛け金の算出方法等が給付水準を検討する際の要素となりますが、給付水準は制度設計の根幹にかかわることですので、企業内の標準的労働者についてJAMの退職金指針が満たされる水準でなければなりません。
4)
加入者の選択権
既存の退職金制度や企業年金からの移行には、加入者本人に選択権を与えるべきです。
移行の形態としては多様な形態が想定されます。新入社員からの順次移行、確定拠出型と確定給付型の併存、既存の企業年金部分だけの移行、退職金の一部移行、既存制度の新制度への全面移行(既存制度の廃止)など。当該企業に適した移行形態が採用されるべきです。
移行に当たっては労働協約や就業規則の改訂が必要となりますが、特定の者に不利益が生じないよう、既存制度や複数の新制度を設けるなど、加入者に選択権が与えられるべきです。
5)
労使合意が前提
制度の内容や変更は年金規約の作成と変更によりますが、そのためには労使合意が条件とされています。
6)
加入対象の規定
企業型年金では、規約により加入資格を限定することができます。この制度では、60歳から受給するためには少なくとも10年の加入期間が必要となるため、特に制度導入時において60歳到達までに10年に満たない者への配慮(例えば、加入者としない等)が必要となります。
少子化の進行による労働力の減少と働き方の多様化を十分に考慮し、長期的な視点から加入対象を決めるべきでしょう。
7)
掛金
掛金は定額でも定率でも設計できます。掛金の算定(設定)については特定の者が不利にならないように設定しなければなりません。
掛金を定率で拠出する制度設計をする場合、拠出限度額が低いため、限度を超えることが考えられます。限度を超えた分について給与や賞与に上乗せする、貯めておいて退職時に一時金とするなどの配慮が必要です。給与や賞与に上乗せする場合、税金、社会保険料がかかりますので、その分は事業主負担とすべきです。
8)
過去勤務期間
個人単位の月例拠出が前提となる制度なので、過去勤務期間は本来存在しません。新制度に移行するとき、加入期間と勤続期間を一致させるためには、既存の退職給与引当金や企業年金から資産を移行させます。法は制度が過去から存在していたとみなす事業主掛金の「みなし元利合計額」を移管資産としています。厚生年金基金や税制適格年金を廃止する場合は、年43万2千円の元利合計。一部廃止する場合は、年21万6千円の年間拠出限度額です。
9)
運用方法・運用指図
運用に関して、事業主や運営管理機関は、運用や投資に関わる必要な情報を提供すること(義務)、導入時と導入後に資産運用教育を必要かつ適切に行うこと(努力義務)とされています。運用責任は加入者の自己責任とされており、運用結果が年金給付額の多寡にかかわるので、十分な情報提供と加入者教育が重要となります。優秀なコンサルタントの配備も役立つでしょう。また、加入者がいつでも相談、利用できるシステムと部門を設ける必要があります。それらに係る費用は事業主負担とすべきです。
各種手数料負担は年金規約で定めることとなっていますが、事業主負担とするべきです。
10)
運用利回り
運用利回りについては、少なくとも年1回は労使でチェックし、市場金利の動向に対応しつつも、極端な金利低下がある場合には、ある程度は企業側が負担するものとする必要があります。
11)
給付種類と給付額
老齢給付は加入者が60歳に到達するまで受給できません。このことは現行の退職金(一時金)制度と大きく異なるため十分に留意しておかなければなりません。また、給付額は60歳になり、給付の請求をしたときの個人別管理資産の額と支給予定期間によって決まります。
12)
支給格差と支給制限
退職金制度では、退職理由により格差が付けられ、懲戒解雇の場合には支給しないということがありますが、確定拠出年金ではこうした格差をつけられません。また、この確定拠出金制度では、規約によって、勤続3年未満の場合、企業の拠出分に関して受け取る権利を与えないという規定をすることができます。これは退職金制度の慣習からきたものですが、退職金が賃金の後払いであるという労働組合のスタンスに立てば、支給制限を設けるべきではないでしょう。少なくとも、従来の退職金協定との整合性をとるべきです。
13)
企業グループで実施する企業型年金
各事業所の労働組合の同意が必要。企業グループ内での異動処理やコスト軽減が可能になります。確定拠出年金は、事業主の拠出金を個人別に管理し、加入者が自分の個人別管理資産を運用し、転職の際には個人別管理資産を持ち歩きますが、規模が大きければコストの低減がはかれます。
14)
確定給付から確定拠出への移行
既存の企業年金や退職金は、長期勤続者に手厚いものとなっています。確定拠出年金は、制度の本来の性格や拠出限度額の低さから、長期勤続者に手厚い給付構造にすることは困難です。このため、制度移行の際に、中高年の長期勤続者に不利益が生ずる可能性が出てきます。
15)
厚生年金基金から確定拠出年金への資産移管
厚生年金基金を解散し、確定拠出年金へ資産の一部あるいは全部を移管することができます。資産に積立不足があるときには解散できません。積立不足分を企業が一括拠出するか、積立不足が解消する水準に給付設計を変更すること(給付引き下げ)が必要です。積立不足の解消は企業の責任で行うのが原則です。しかし、給付水準の引き下げを検討しなければならない場合にも、積立不足が生じた原因を含め引き下げを必要とする理由の十分な情報提供と説明が行われなければなりません。
厚生年金基金の解散や給付水準の引き下げについては、厚生年金基金の代議員会の議決とともに、加入員の3分の1以上で組織している労働組合がある場合、その同意も必要です。
厚生年金基金の資産は、代行部分が厚生年金基金連合会に移管され、それ以外の残余財産が厚生年金基金規約の規定に基づいて、加入員に分配されます。この残余財産を確定拠出年金に移管することができます。
16)
現下の異常な金融情勢のもとでは慎重な対応を
現在の資金運用環境下で、個人口座管理料や運用手数料などの負担を考慮すると元本割れの恐れが大きくあります。
金融不安が渦巻いている日本の金融情勢のもとで、老後生活を支える重要な柱の一つを、金融商品や投資知識の乏しい組合員の自己責任で運用させる制度の採用は、慎重な検討と十分な準備を必要とします。
17)
個人型年金
企業型年金実施企業から企業型年金のない企業へ転職した場合、それまでの積立金は国民年金基金連合会に移管され、60歳まで受給できません。
厚生年金基金など他の企業年金がない企業であれば、希望する者は自分で掛金を拠出し、個人型年金に加入できます。JAM組織内の企業であれば、運営管理機関としての労働金庫を活用することも考えられるでしょう。ただし、運営管理機関選定は60歳までの長期の関係ですし、運営管理機関の変更は運用商品の現金化(解約手数料)などコストがかかりますので、慎重な選定が必要です。
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