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60歳に達するまでは引き出すことができないこと、企業拠出に加えて労働者自身が拠出し、あるいは労働者の拠出に企業が補助する制度が対象から除かれていること。

限度額は確定給付型年金のあるところでは月額1万8000円、それがないところでは同3万6000円。これに対し、「個人型年金」に加入して自ら拠出する労働者については1万5000円にすぎない。自営業者については、国民年金基金掛金と合せて6万8000円。大企業と自営業者が優遇されるこのような格差に合理的な根拠はない。

企業が拠出する「企業型年金」だけでなく、個人が加入して拠出する「個人型年金」についても、積立金に特別法人税を課す。個人が拠出したものに法人税をかけるのは、現在の個人年金との比較において合理性を欠く。

確定給付型企業年金の一部または全部を確定拠出型に切り替えるとき、中高年齢層で水準の切り下げ(不利益変更)が発生する可能性がある。だが、法案はこの移行について必要な検討を先送りしている。労使協定でつくられる企業年金規約には、旧制度との選択を認める条項を含めることが必要である。

個人別資産管理が鍵となる「401(k)」型ではシステムが複雑になることは避けられない。このような仕組みでは、年金資産を「分離して保全する」原則があいまいにされる可能性がある。大手金融機関が資産管理機関となりさらにそれが運営管理機関をも兼ねる場合、運営管理機関が求められる中立性を逸脱した場合のペナルティの規定を欠いている。

システムが複雑な「401(k)」型では、制度運用のコストが高くなる。今回の「企業型年金」についてみれば、企業、運営管理機関、資産管理機関、金融機関、労働者、受給者等それぞれの関係で手数料が発生する。単純なシステムですむ一括運用型に比べてコストが高くなる結果
、同じ収益を確保するにはリスクの高い運用が必要となり、そのリスクを加入者が負わねばならないのが「401(k)」型の特徴である。

労働者・加入者が自ら運用を指図する「401(k)」型では、運用商品の適切な選択と的確な指示をできるだけの投資教育と情報提供がきわめて重要になる。法案では投資教育と情報提供について、運営管理機関のみ義務規定があり、事業主の責務は「努力義務」規定にとどまっている。加入者保護の観点から、事業主の責務について明確に義務づけるべきである。

資産管理機関や運営管理機関は「加入者に忠実に義務を遂行する責任」すなわち「忠実義務」を負う。アメリカの企業年金・退職金制度を規定している「エリサ法」は、受託者は「加入者および給付金受取人の利益のためだけに行動しなければならない」ことを定め、「加入者及び受取人への給付金を提供すること、年金プラン運営にかかる妥当な費用を支出することのみ」を目的にするとその活動目的を限定し、また“同程度の能力があり同程度に問題に精通
している「慎重な人」なら発揮したはずの注意、技術、慎重さ、勤勉さをもって責務を果
たさなければならない”、いわゆる「プルーデントマン・ルール」と呼ばれる義務を明記している。法案はそれを「行為準則」で明示しているが、こうした考え方を適切に採り入れているとは言いがたい。また、企業や国民年金基金連合会、資産管理機関の「忠実義務」に関する違反行為については罰則規定を欠いている。

加入者の個人情報の保管および使用について、事業主と運営管理機関の行為準則の中で、「業務の遂行に必要な範囲内」という一定の制限が設けられているが、違反した場合の罰則規定はない。また、各機関での個人別管理に基礎年金番号を使用する場合は、民間利用についての法規定が必要不可欠である。

この「確定拠出年金制度」と連動する「受給権保護」の法制定が検討されていたはずだが、それは先送りされた。「企業年金基本法」(仮称)に具体化されるべきこの保護措置を先送りしたまま今回の法案提出に踏み切ったのは、優先順位
の逆転である。
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