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1.

 本日(6/22)、確定拠出年金法案が、参議院本会議において賛成多数で可決され、成立した。企業年金の運用責任とリスクを勤労者個人に転嫁する同法案が、衆議院に引き続き、政府原案のまま参議院で可決・成立したことは、極めて遺憾である。同法案の成立によって、経営者が安易に従来の企業年金や退職金を確定拠出年金に移行することになれば、「勤労者の老後不安を一層高め、将来に禍根を残す」とあらためて強く警告せざるを得ない。

2.

 連合は、同法案に対し、「制度導入の環境条件が未整備であり、賛成できない」ことを表明してきた。すなわち、制度導入には、(1)厚生年金基金の代行制度廃止と「支払保証制度」を盛り込んだ企業年金基本法の制定、(2)金融・証券市場の透明性を確保することが前提である。(3)さらに、国民の資産運用の経験が乏しく、運用リスクを個人に負わせる制度導入は、現在の超低金利のなかでは、時期尚早であり、無理があることを指摘してきた。

3.

 また、連合は、従業員への投資教育など企業の受託者責任の不十分性、掛け金限度額の違いによる企業間格差の拡大、運用時の特別法人税課税、さらに60歳まで中途解約ができないなど同法案の問題点を指摘し、これらの修正を求めてきた。これらの問題点については、衆・参議院でも全く修正されることなく、問題の多い政府原案のまま成立している。

4.

 衆・参議院での法案審議を通じ、法案の不備に加え、金融・証券取引の不透明性や監視機構の不十分性、現在の超低金利と不安定な株価など最悪の運用環境のなかでは、老後の年金原資の元本割れの危険性が極めて高い等の問題点も、一層明確になっている。さらに、制度導入の目的とされている中小企業への普及、ポータビリティ確保なども、全く不十分であることが明らかになっている。

5.

 勤労国民は、いま雇用不安と将来不安に脅かされている。このようななか、昨年の公的年金制度の改悪に加え、退職金や企業年金までも不安定・不確定なものにしてしまう本法案は、老後不安を一層増大させるものでしかない。連合は、あらためて確定拠出年金の制度導入の前提として、金融・証券市場の透明性確保と情報開示の徹底、監視機構の強化など環境条件の整備、また、同法案の問題点の早期是正を強く求める。さらに、老後生活の不安を解消するために基礎年金の税方式化など信頼できる公的年金制度の確立を強く要求する。

 



 

 
政府の『確定拠出年金法案』については、連合の指摘する諸欠陥(注)、金融・証券市場の不透明性、情報公開不足、超低金利下でのコストと運用収益などを勘案し、『企業年金基本法』(仮称)制定とあわせて制度導入の環境条件を整備した上で審議する。
−「2000〜2001年度 要求と提言」より−

 


 60歳に達するまでは引き出すことができないこと、企業拠出に加えて労働者自身が拠出し、あるいは労働者の拠出に企業が補助する制度が対象から除かれていること。


 限度額は確定給付型年金のあるところでは月額1万8000円、それがないところでは同3万6000円。これに対し、「個人型年金」に加入して自ら拠出する労働者については1万5000円にすぎない。自営業者については、国民年金基金掛金と合せて6万8000円。大企業と自営業者が優遇されるこのような格差に合理的な根拠はない。


 企業が拠出する「企業型年金」だけでなく、個人が加入して拠出する「個人型年金」についても、積立金に特別法人税を課す。個人が拠出したものに法人税をかけるのは、現在の個人年金との比較において合理性を欠く。


 確定給付型企業年金の一部または全部を確定拠出型に切り替えるとき、中高年齢層で水準の切り下げ(不利益変更)が発生する可能性がある。だが、法案はこの移行について必要な検討を先送りしている。労使協定でつくられる企業年金規約には、旧制度との選択を認める条項を含めることが必要である。


 個人別資産管理が鍵となる「401(k)」型ではシステムが複雑になることは避けられない。このような仕組みでは、年金資産を「分離して保全する」原則があいまいにされる可能性がある。大手金融機関が資産管理機関となりさらにそれが運営管理機関をも兼ねる場合、運営管理機関が求められる中立性を逸脱した場合のペナルティの規定を欠いている。


 システムが複雑な「401(k)」型では、制度運用のコストが高くなる。今回の「企業型年金」についてみれば、企業、運営管理機関、資産管理機関、金融機関、労働者、受給者等それぞれの関係で手数料が発生する。単純なシステムですむ一括運用型に比べてコストが高くなる結果 、同じ収益を確保するにはリスクの高い運用が必要となり、そのリスクを加入者が負わねばならないのが「401(k)」型の特徴である。


 労働者・加入者が自ら運用を指図する「401(k)」型では、運用商品の適切な選択と的確な指示をできるだけの投資教育と情報提供がきわめて重要になる。法案では投資教育と情報提供について、運営管理機関のみ義務規定があり、事業主の責務は「努力義務」規定にとどまっている。加入者保護の観点から、事業主の責務について明確に義務づけるべきである。


 資産管理機関や運営管理機関は「加入者に忠実に義務を遂行する責任」すなわち「忠実義務」を負う。アメリカの企業年金・退職金制度を規定している「エリサ法」は、受託者は「加入者および給付金受取人の利益のためだけに行動しなければならない」ことを定め、「加入者及び受取人への給付金を提供すること、年金プラン運営にかかる妥当な費用を支出することのみ」を目的にするとその活動目的を限定し、また“同程度の能力があり同程度に問題に精通 している「慎重な人」なら発揮したはずの注意、技術、慎重さ、勤勉さをもって責務を果 たさなければならない”、いわゆる「プルーデントマン・ルール」と呼ばれる義務を明記している。法案はそれを「行為準則」で明示しているが、こうした考え方を適切に採り入れているとは言いがたい。また、企業や国民年金基金連合会、資産管理機関の「忠実義務」に関する違反行為については罰則規定を欠いている。


 加入者の個人情報の保管および使用について、事業主と運営管理機関の行為準則の中で、「業務の遂行に必要な範囲内」という一定の制限が設けられているが、違反した場合の罰則規定はない。また、各機関での個人別管理に基礎年金番号を使用する場合は、民間利用についての法規定が必要不可欠である。


 この「確定拠出年金制度」と連動する「受給権保護」の法制定が検討されていたはずだが、それは先送りされた。「企業年金基本法」(仮称)に具体化されるべきこの保護措置を先送りしたまま今回の法案提出に踏み切ったのは、優先順位 の逆転である。

 



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